タイ政府、大麻規制を再導入へ



Reutersによると、タイ政府は2022年の大麻解禁政策を大幅に見直し、近く規制を再導入する見込みだ。この動きは、推定10億ドルを超える規模に成長した大麻産業の将来に大きな不透明感をもたらしている。


政治変動が規制強化を加速

今回の再規制の動きは、タイの政治状況の変化と密接に関係している。大麻合法化を強く推進してきた連立政権の第2党である**「タイの誇り党」が、最大与党「タイ貢献党」との連立から離脱したことが、娯楽目的の大麻使用に対する新たな規制導入に拍車をかけた**。これは、タイ貢献党のペートンタン首相によるカンボジアとの国境問題への対応を巡る意見の相違が引き金となった。


保健省による具体的な措置と政府の意図

タイ保健省は、娯楽目的の大麻販売を禁止し、小売店での購入には医師の処方箋を義務付ける命令を24日夜に発布した。この新規制は数日以内に官報に掲載され、効力を発する見込みだ。ソムサック保健相は24日、「大麻は将来的に麻薬に分類されることになる」と明言しており、大麻の医療目的利用への回帰を目指す政府の強い姿勢がうかがえる。


急成長した大麻産業と政府の懸念

タイは2022年にアジア諸国で初めて大麻を解禁したが、その際に業界全体を包括する法整備は見送られた。結果として、解禁後には観光地を中心に全国で大麻販売店が急増した。タイ商工会議所は以前、医療製品を含む大麻関連産業の市場規模が2025年までに12億ドルに達するとの試算を公表しており、この分野の急成長ぶりを示していた。

しかし、政府報道官は、大麻解禁が特に子供や若者の間で深刻な社会問題を引き起こしていると指摘。「政策を医療目的の大麻利用という本来の目的に戻す必要がある」と述べ、再規制の必要性を強調した。


業界に広がる動揺と不安

この突然の再規制の動きは、大麻業界に大きな衝撃を与えている。バンコクのある大麻販売店の店員は「これが私の主な収入源だ。多くの店舗も同じようにショックを受けているだろう。多額の投資をしてきたのだから」と、切実な不安を口にした。

今回の再規制は、タイの大麻産業の未来を大きく左右する転換点となるだろう。政府は社会問題の解決を目指す一方で、成長産業としての潜在力を持つ大麻業界がどのように適応していくのか、今後の動向が注目される。

タイ政府、大麻規制を再導入へ 22年の解禁政策見直し
Reuters